ペイロールカードとは?給与支払いの新しい方法

日本でも将来的に導入される可能性がある「ペイロールカード」とは、一体どのようなものでしょうか? また、ペイロールカードが普及することで、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか? こちらでは、働く人の未来に関わる、ペイロールカードの基礎知識をご紹介します。

ペイロールカードとは?

ペイロールカードとは、給与の振り込み先として機能するカードのことをいいます。

ペイロールカードの大きな特徴は、利用するために銀行口座を開設する必要がないことです。ペイロールカードのみで電子決済や現金の引き出しができるため、事情があり銀行口座の開設が難しい方でも利用できます。

企業が導入した場合、雇用主が従業員へ報酬を支払うときに、ペイロールカード宛てに給与の振り込みを行います。一方で、従業員は給与が振り込まれたペイロールカードを使い、店舗で電子決済を行ったりATMから現金を引き出したりします。

近い将来に法律が改正され、電子決済による給与支払いが解禁される見込みであることから、近年ペイロールカードの知名度が高まりつつあるようです。さらには、ペイロールカードとスマートフォンのアプリが連携する可能性も考えられ、給与支払い方法の刷新が期待されています。

ペイロールカードが導入される背景

海外諸国では、すでに電子決済が普及しつつあります。株式会社野村総合研究所が発表したデータによれば、2016年のアメリカのキャッシュレス比率は46.0%、韓国は96.4%、シンガポールは58.8%、インドは35.1%でした。さらに、中国は2015年で約60%に達し、いずれも4~5割近く普及している状況です。

それに対して、2016年の日本のキャッシュレス比率は19.8%であり、海外諸国と比べてやや後れを取っている状況にあります。社会では依然として現金での支払いが主流となっており、電子決済の普及についてはまだかなり伸びしろがありそうです。

そんな日本でペイロールカードの導入が検討されている背景には、外国人労働者の受け入れがひとつの理由として挙げられます。現状、国内の外国人労働者には銀行口座を開設するハードルが高いという課題がありました。

ペイロールカードが導入されれば、各企業は銀行口座を持たない外国人労働者を採用し、問題なく給与を支払えるようになります。結果として、多くの企業が新たな働き手の確保につながるのではないかと考えられているのです。

参考:株式会社野村総合研究所「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」

給与支払い方法の変遷

近年、ペイロールカードの導入にともない、「労働基準法」の改正が検討されています。過去の歴史で、時代に即した給与支払いの方法が見直されてきたのと同じように、ペイロールカードへの給与支払いが間もなく解禁されるかもしれません。

そもそも現在の給与支払いの方法は、1947年に制定された「労働基準法」が基になっています。ここでは、従業員の賃金について、原則として通貨で支払うことが定められています。当時の給与は、すべて現金を手渡しする形で支給されていました。

しかし、一人ひとりの従業員に現金で給与を支払う形式には、さまざまなリスクやコストがともないます。実際に、給与を運ぶ現金輸送車が盗難事故に遭うといったトラブルも発生し、社会に大きな衝撃を与えました。

その後は法律の改正により、一定の要件を満たす場合に、従業員の銀行口座への振り込みが認められるようになりました。こうして1969年頃から徐々に、給与を現金で手渡しする企業が減り、銀行口座への振り込みが主流になっていったのです。

ペイロールで注目される「フィンテック(FinTech)」

ペイロールカードを含む、新しい金融サービスの誕生を支える技術は、「フィンテック(FinTech)」と呼ばれています。こちらは「Finance(=金融)」と「Technology(=技術)」を組み合わせた言葉で、近年注目を集めています。

フィンテックの関わる範囲は幅広く、送金や決済だけでなく、投資や仮想通貨などの分野にも至ります。今後、給与の電子決済が導入されると、国内ではさらに新しい金融サービスへのニーズが高まると考えられています。そんな中で、フィンテックへの関心はますます高まっていくでしょう。

フィンテックを活用したサービスが導入されると、従来のお金の動きが大きく変わり、利便性や安全性がより高まる可能性があります。このような最新技術を導入することで、競争力を強化する企業が増えていくのではないでしょうか?

今後はペイロールカードの登場により、給与支払いの方法が変わろうとしています。給与支払いは、一人ひとりの従業員と関わる大切な業務です。いち早くフィンテックを取り入れることが、人材採用の成功を大きく左右するかもしれません。

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国内でペイロールカードによる新しい給与支払いの方法が解禁される可能性があります。企業は従業員の働き方に関わる新しい技術を導入し、人材採用での競争力をますます強化していくことが求められるでしょう。ペイロールカードの基礎知識を担当者間で共有し、備えておくことが大切です。