「お得」から「便利」へ。キャッシュレス推進と消費者の動向

“お得”をきっかけにキャッシュレス決済を利用し始めた方も、しだいに“便利”を実感し始めているのではないでしょうか。キャッシュレス比率が高まるにつれ、デジタルマネーは私たちの生活になくてはならないものに変わってきています。ここでは、そんな消費者の動向に触れながら、今後のキャッシュレス決済についてお伝えします。

「お得」から「便利」に変わるキャッシュレス

多くの消費者がキャッシュレス決済を利用するきっかけとなった、消費者庁の「キャッシュレス・消費者還元事業」。キャッシュレス決済の利用で最大5%もの還元を受けられる同事業では、“お得”という観点で関心を持つ方が多かったのではないでしょうか?しかし、キャッシュレス決済のメリットはそれだけではありません。

実際にキャッシュレス決済を利用するようになると、さらに“便利”を実感するようになった方も多いはず。キャッシュレス決済には、貨幣を財布から取り出したり、お釣りを受け取ったりする手間がありません。スムーズに支払いができるキャッシュレス手段と比べて、現金払いを面倒だと感じることもあるでしょう。

このように“お得”だけでなく“便利”を実感する段階になると、なかなか現金払いには戻りにくいといえます。キャッシュレス決済の浸透にともない消費者心理が変化を続ければ、これまでの常識が覆るかもしれません。キャッシュレス化の過渡期にあたる今、次にどのような変化が起こり得るのでしょうか?

キャッシュレス手段の競争激化

キャッシュレス手段の選択肢は、次々と増え続けています。現状ではキャッシュレス手段のなかでクレジットカードの利用者が大多数であるものの、新たに登場したQRコード決済の利用者も数を伸ばすでしょう。さらに最先端のテクノロジーを取り入れたキャッシュレス手段が登場し、主流となる可能性もあります。

このようにキャッシュレス決済が浸透すれば、消費者は各種キャッシュレス手段を比較検討するようになります。ポイント還元率の高さや、利用可能な店舗数などの条件で、ほかのキャッシュレス手段との競争が激化すると見込まれます。ユーザーの確保が難しければ、サービスが終了するおそれもあるでしょう。

例として挙げられるのは「Origami Pay」のサービス終了です。スマホ決済の先駆けとして登場したOrigami Payですが、近年のキャッシュレス手段の競争激化が収益の悪化につながったようです。2020年6月30日にはすべての機能が停止され、株式会社メルカリのサービス「メルペイ」に統合される予定となっています。

キャッシュレス手段は進化を続けます。将来的に、顔認証や生体認証の技術がキャッシュレス決済に導入されれば、いずれはスマートフォンなしでの決済も可能となるかもしれません。画期的なサービスの登場や、類似サービスを提供する競合他社の増加など、今後もキャッシュレス市場にはさまざまな波乱が起こると予想されます。

キャッシュレス対応による売上の変化

店舗のキャッシュレス対応の状況が、売上に与える影響も無視できません。消費者が食事や買い物をする店舗を選ぶとき、利用可能なキャッシュレス決済手段がひとつの判断材料となっています。現状ではそれほど大きな差異がなかったとしても、キャッシュレス比率がより高まったとき、売上への影響もより大きくなると考えられます。

たとえば、キャッシュレス決済を利用する消費者が、職場からもっとも近い飲食店AまたはBを選ぶとします。A店はキャッシュレス対応、B店はキャッシュレス非対応です。普段からほとんど現金を持ち歩かない方の場合、利便性の高さからAを選んでリピートすると推測されるでしょう。

あるいは、C社の決済サービスを導入したA店、D社の決済サービスを導入したB店があるとします。普段からC社のポイントを貯めている方の場合、ポイントが付与されてお得に買い物をしやすいのはA店です。このように、店舗にどのようなキャッシュレス決済手段を導入するかが、消費者の行動に影響を与えます。

現状ではほとんど影響が見られなくても、将来的なキャッシュレス比率の上昇に備え、早めにキャッシュレス決済に対応するのもひとつの手です。

今後に控える給与デジタルマネー払い解禁

2019年に話題にのぼった給与デジタルマネー払い。これまで現金で支給されていた給与が、ペイロールカード宛てにデジタルマネーで入金される仕組みです。2020年も引き続き解禁へ向けて注目が集まっています。給与デジタルマネー払いが実現されれば、キャッシュレス比率が大幅に向上する可能性も考えられるでしょう。少しずつ変化する消費者の動向を把握し、今後のビジネスシーンでお役立てください。

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今回は、キャッシュレスの推進と消費者の動向についてお伝えしました。より多くの方がキャッシュレス決済を利用するようになれば、キャッシュレス手段の競争が激化し、またキャッシュレス対応が売上を左右すると考えられます。給与デジタルマネー払いの解禁へ備えて、早めに世の中の動きへ対応しましょう。