給料の前借りがNGなワケ。「前払い」で対応するべき3つの理由

「生活が苦しいので頼むから給料の前借りをさせてほしい!」

長年にわたり真面目に勤務している古株の従業員から、ある日このように依頼されたとしたら、会社側はどのように対処するべきでしょうか。給料の前借りのリスクについて十分に理解し、冷静な判断が求められる局面です。

今回は、会社側が給料の前借りを承諾する危険性と前払いで対応したほうが良い理由についてお伝えします。従業員との金銭トラブルや、会社への損害を回避するために、ぜひご一読ください。

【理由1】従業員とのトラブルに発展するおそれがあるため

給料の前借りが懸念される理由として初めに挙げられるのは、やはり従業員とのトラブルに発展するリスクがあることでしょう。基本的に、金銭の貸し借りが人間関係に悪影響を及ぼす危険性は非常に高いといえます。それは相手が信頼できる従業員であっても同様です。会社としてそのリスクを負うべきか、冷静な判断が求められます。

よくある例として、従業員が前借りをしたまま退職するケースが挙げられます。退職後、なかなか返済されなかったり、返済が先延ばしになったりすれば、会社側は不利益を被る結果となるでしょう。たとえ信頼できる従業員からの要望であったとしても、金銭が絡む問題については、とにかく応じないことが最大のリスク対策です。

どうしても給料の前借りに応じるのであれば、前もって借用書を作成したり、連帯保証人を立てたりと、相応の手続きを行うべきでしょう。前借りを申し出た従業員の立場から見れば、まるで会社から信頼されていないように見えるかもしれません。しかし、本人にも金銭トラブルのリスクについて理解してもらうことが大切です。

【理由2】従業員に不健全な資金繰りのクセがつくため

従業員が給料の前借りを申し出たとき、会社側は相手に同情せずにはいられないかもしれません。「大切な従業員が生活に困っているなら仕方がない」「この人なら一度くらい貸しても大丈夫だろう」そんな思いを抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、その善意が1人の人間の人生を変えてしまうおそれがあります。

そもそも前借りとは、“まだ従業員が働いていない分の給料を、会社側が貸し付ける行為”と言い換えることもできます。たとえ従業員からの要望だったとしても、そこで会社側が承諾してしまえば、従業員に「借金」を作らせてしまう点を理解しておきましょう。善意のつもりが、結果として本人を苦しめる可能性があります。

具体的には、従業員に不健全な資金繰りのクセがついてしまうケースです。一度の給料の前借りをきっかけに、従業員が金融機関での借金に手を出す場合も想定されます。万が一、給料の前借りを通して1人の人生に大きな影響を与えてしまった場合、その責任を取るのは非常に難しいといえるでしょう。

【理由3】貴重な労働力を失う結果につながるため

給料の前借りが発端となり、貴重な労働力である従業員が退職に追い込まれてしまう場合があります。たとえば、従業員が返済に追われて日払いの仕事へ流出したり、家計が破綻して今までの仕事を続けられなくなったりするのは、その一例です。場合によっては、違法な金融機関に頼らざるを得ない可能性もあるでしょう。

業界を問わず多くの企業で人手不足が課題となっている今、労働力を失うことによる損害は計り知れません。まず、退職手続きのコスト、人材採用のコスト、そして人材育成のコストが発生します。さらには、新たな働き手が見つからなかったり、採用した人材が定着しなかったりして、業務に支障をきたすおそれもあります。

給料の前借りは、従業員に貸し付けた金額以上に、大きな損害をもたらす危険性のある行為です。長期的な視点でリスクについて考慮しておきましょう。

金銭トラブルのリスク対策に給料前払い制度を導入しよう

給料の前借りとはまったく別の手段で、給料日前の従業員に給料相当額を支払う方法があります。それは、給料の「前払い」制度です。

給料の前払いとは、従業員が働いた実績の分だけ、給料に相当する金額を引き出せる仕組みを指します。前払いでは、従業員が働いていない分の給料を受け取ることはできません。つまり、従業員は借金をせずに、すでに自分が働いた分のお金を、給料日前に使えるようになるのです。

このとき、従業員は給料相当額の全額を引き出す必要はありません。あくまで給料日前に手元に必要な金額の分だけ引き出せば良いのです。少額の利用で状況が改善する場合もあります。計画的に給料相当額を引き出し、健全な形でキャッシュフローをサポートできるのが、給料前払いのメリットといえます。

給料前払いに対応するなら、「給料前払いシステム」の導入をおすすめします。給料前払いシステムとは、従業員の勤怠データを取得し、従業員が気軽に前払いを利用できる専門のシステムを指します。導入については、給料相当額随時払いシステムの「ADVASA」まで、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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給料の前借りを認めることは、会社側の善意による承認であったとしても、従業員の人生に好ましくない影響を与えることがあります。企業に損害を与える危険性もあるため、給料前払い制度を整えて、リスク対策を講じましょう。